まださなぎ(旧)

誰かさんの蝋の翼。気負わず気楽に書いてくよ。

百合と食事と魔法少女。『テーブルフロンティア!』はガッツリ詰め込まれたデラックス弁当だよ!

 食欲と愛欲はよーく似ている。欲しくなると無性に欲しくなって、満たされ過ぎると辛くなる。昨日楽しめたものであっても、今日にはもう飽きてるし、明日には別の匂いを嗅いでいる。いくら食べて満足しても、喉元すぎればなんとやら。そうこうしてると心もお腹も、またまた寂しくなってきた。
テーブルフロンティア!」という弁当箱にぎっちりと詰め込まれているのは、そんなワガママな女の子像そのものだ。綺麗な絵、可愛い女の子、浮き沈みのあるストーリー、激しい戦闘、穏やかな日常、きらめく魔法、つやめく友情、ざわめく嫉妬。
「ぜーんぶぜーんぶ欲しいんだ!」と叫ぶ声が今にも聞こえてきそうなほどに、この作品は何から何まで詰め詰めだ。ぎゅうぎゅう詰めのすし詰めの、も一つオマケの缶詰だ。

 記事タイトルが長ければ前置きも長い! ……そろそろ本題に入ろう。

*作品カルテ

(記事執筆【2016/03/18】時点現在。人名については敬称略)
タイトル: テーブルフロンティア!
作者: 鴨見カモミ
作品形式: 縦スクロールWEBマンガ(商業サイト掲載)
掲載サイト: comico【作品ページ
閲覧制限: なし(comico日本サイトは原則全話公開のシステム)
作品非公式略称: テーフロ、ブルフロ、デラ弁、他

脚本的方向性: 日常・人間関係重視の魔法少女もの
シリアス度: (今のところ)ほんのりと話を引き締める程度
鬱設定: 今のところほとんどなし
鬱展開の可能性: 意外とある

百合的方向性: 行き過ぎた熱烈さを見せる友情百合
百合度: 全体的に高め
男性キャラクター: 基本的になし(背景モブ登場のみ)

備考: ハイクオリティな作画、多様な食事表現、ファンタジック世界観(文化水準は現代的)

もいちど作品ページ掲載。↓に見受けられるように、絵がとっても綺麗な人だよ。

www.comico.jp

*王道直球一点突破の作品

 前置きでも書いたが、この「テーブルフロンティア!」は何かとぎっしり詰め込まれている。背景の隅の隅、設定の端の端まで綺麗な宝石が散りばめられ、描かれる世界全てがきらびやかで、嫌われ者は一人もいない。

 これは理想に理想を足して、空まで届く塔を積んでいくかのように。“本気”で無ければ作り出せない、まさしく理想、まさしく王道のファンタジー世界だ。

 

 世界に引き合うように、脚本も王道。ひょんなことから知られざる魔法の世界を知った少女が、仲間たちと共に進んでいくストーリー。

 百合も王道。幼馴染という断金の契りすら切り裂く、運命の出会い。離れていく友を遠く思う嫉妬の炎。友情の名でも恋愛の名でも定義しきれない、心焦がれる慕情の塊。

 

 それだけではない。「テーブルフロンティア!」のストーリーテリング・演出の中には、一つと言って革新的な技法は存在しておらず。伝統と王道の制式が採用されている。

 ページという概念のない縦スクロールを活かし、切れ目のないアニメ調に描く技法。デジタル媒体・フルカラーであることを活かし、場面場面に横たわる空気を色合いの違いで描く技法。モノローグを多用し、複数の心情を鮮やかに描く技法。

 歴史あるマンガ・アニメ分野においては使い古されたものばかりだし、掲載サイトcomicoにおいてでも、先駆者が幾人も見受けられるものだ。

 しかし、ともすれば「マンネリ」とも「テンプレ」とも揶揄されることを恐れず、愚直なまでに王道を貫き通す。

 そんな素直な脚本、素直なキャラクター、素直な姿勢は、美しい作品世界を描き出すことに成功している。……といったあたりにね。とにかく面白いのよ。


 現在も全話公開されてるWEBマンガだから、正直こんな文章読んでないで早いところ読んで欲しい。が、慎重派の人のためにも、ちょっとしたあらすじをこちらで用意した。

 なるべくネタバレには気を使ったが、仕方ないところは許して。それと全体の可読性のため、あらすじ部分は文字を小さくした。老眼の方には申し訳ない。

「Dish01~19」(以下、第一章と表記)

 マナと呼ばれる力が満ち、人々が魔法による文明を享受するカトラリア王国。王国辺境の田舎町セラドンには、今日も静かな日常が流れている。王立セラドン魔法学校中等部に在籍する「キャロメルリ・カロメルトン(愛称はキャロ)」もまた、日常に生きる少女の一人。……しかし、彼女の日常の裏側には、思いもよらぬ真実が隠されていた。
 人が料理を食べてマナを摂取する時、その空間は時折現れるという。ある時そこに囚われたキャロが目にしたものは、間違いなく日常の裏側。動けない自分を守るために、凛々しき蒼銀の少女が幻想を舞う光景。その空間の詳細、少女の名前、彼女が戦う理由、そして、定められた自分の運命すらも。その時のキャロは何も知らなかった。(Dish01~06) 

 第一章は、キャロが初めての変身に到達するまでの物語だ。落ち着いた時間の流れる田舎町セラドンを舞台として、のんびりとしたペースで世界観を描いていく。
 展開の遅さにも、世界観を描くための理由がある。新たな日常に胸躍らせるキャロ、謎を抱えるアイボリー、幼馴染としての危機感を抱くカシュー。三者三様の立ち位置を見せてから、ゆったり確実に物語を進めていく。
 百合的な魅力は別に後述するが、端的に言っておくと「キャロ・アイボリー・カシューの百合三角関係」が基本となる。油断してると砂糖漬けにされるから注意ね。 

「Table01~20」(以下、第二章と表記)

 キャロが目を覚ました時、そこはセラドンではなかった。それだけではない。魔法少女――この世界での呼び名は「食器使い」――となってしまったことで、キャロを取り巻くものはひっくり返るように変化していた。セラドンからは遠く離れた、王都ヴァルミリオ。幼馴染のカシューは影も形もおらず、知った景色は一つとして無い。
 たった一つキャロが安心できたのは、新しい友達となった蒼銀の食器使いアイボリーの背中だけ。そうしてアイボリーを追っていくまま、キャロは王国の中心である王都の、そのまた中心へと足を踏み入れる。そこは食器使いたちの家であり、活動拠点であり、新たなる居場所。「テーブルフロンティア」と呼ばれる場所であった。(Table01~06)
 
 第二章は、キャロが食器使いたちの職務と定めを知るまでの物語だ。せかせかとした時間の流れる王都ヴァルミリオを舞台として、駆け急ぐように事情を描いていく。
 前章とは一転したスピーディーな展開が、ザンギエフの立ちスクリューまがいに読者を吸い込む。……少し急ぎ過ぎなくらいに。
 百合的には、三角関係に新たなるキャラクター投下で更なる混乱が来たる。お馴染みの友情(の皮を被った限りなく恋愛に近しい何か)も更に過熱。

 

 田舎町と都市部で異なる時間の流れを投影するように、段違いに早まっていくストーリー。これについては、特別良い演出だと思ってる。

 始めのゆっくり速度に慣れさせてからだと、後の展開が無性にスピーディーに感じる。「高速道路降りた途端に周りがとろ臭く感じる」って奴の逆バージョンなわけだ。

 単純に説明が終わったって部分もあるだろうけど、それもしっかりと世界観を描いてる証拠。僕はどちらにせよ評価するよ。

 

 ここまで、この作品の脚本部分について語ってきた。しかし、「テーブルフロンティア!」は脚本エンジンと百合エンジン、二つセットで出力が高いからこそ、グッド・グレイト・グレイテスト。次の段では百合部分について語っていくよ。

*キャロの世界は百合色たっぷり

 昨今の魔法少女作品と百合要素は、切っても切り離せない関係にある。(百合厨大いに語る)。いや、まあ。僕のような節操のない百合厨が、女の子主人公の作品を邪推の瞳で見てしまっているというのもあるだろうけど。

 こと「テーブルフロンティア!」においては、単なるファンの邪推に留まるものではない! ……はずだ。

 それを証明(紹介?)するためにも、まずは簡単なキャラ紹介から始めよう。(ネタバレなし)

 

 キャロは十二歳(作品開始時)の女の子。元気よく快活な少女で、本名は「キャロメルリ・カロメルトン」。名前も長ければもみあげも長い。

 カシューはキャロの幼馴染で、喫茶店を営む実家「喫茶タルタ」の看板娘。可愛く優しく、全般的に成績優秀の、皆が羨む女の子。本名は「カシュー・タルタ」。

 アイボリーは外からやってきた謎の少女。寡黙で冷ややかな態度だが、時折隠し切れないお節介が伺える。本名は「アイボリー・ポルボロン」。普段は白づくめだが、変身すると……?

 

 基本はこの三人が、作品に置いても百合においても核となる(一章時点)。

 この作品のキャラクターはみんな素直だ。素直に人を受け入れて、素直に人を褒めて、素直に人を羨んで、素直に人を嫉む。

 キャロは「夢を持って成績も伴って、未来へと進んでいこうとしている」カシューを羨んで、「強い意志で役割を果たそうとする」アイボリーに憧れる。

 カシューは「自らの半身のように一緒であった」キャロが離れていくことを恐れて、「力・役割・秘密、キャロといるための全てを持ち合わせる」アイボリーに嫉妬する。

 アイボリーは「天真爛漫で恐れのない」キャロに心を溶かされつつあり、「溶岩ほどに熱い愛を示す」カシューを恐れる。

 

 どうだい、百合パワーをじんわりと感じてきただろう。

 他にも「凛々しいお姫様抱っこでドキドキ(Dish02)」「寝落ちした相手の息をずっと感じていたい(Dish12)」「苦しそうな彼女をそっと抱きしめる(Dish17)」とかね、百合的シチュエーションには事欠かない。

 それこそ直球ネタバレになってしまって、意図的に語ってない百合的名シーンは他にもたくさんある。

 彼女たちの気持ちは純真であり、本物の愛だよ! 僕は性格上何についてもはっきり言えないけど、これだけは断言できるよ!

*まとめにかえて~次章の展開は?~

  長かった記事も、そろそろ終わり。話をまとめるのは苦手だから、この先の展開を話しておこう。

 「テーブルフロンティア!」は波乱に満ちた二章終了からまるまる一ヶ月、計画的な休載を行っていた。そして来たる、次の日曜日(2016/03/20)。ファン待望の第三章がお披露目されるという。

 分かたれた幼馴染の絆は? アイボリーに起きた過去の事件とは? そして負傷した食器使いマキアは? などなど様々な謎を残した上での次章移行。一体どんな展開が待っているのだろうか。

 

 もしや……。

 アイボリーが姿を消し、追ってキャロも姿を消した。それと同時期に「白い髪の女はいるか?」と聞き回る旅の料理人の噂が流れだす。
 曰く、そのもみあげは長く。曰く、その姿は美少女。噂を追ってカシューが見つけたのは、見違えるように料理人となったキャロであった!
 突如として立ちはだかる暗黒料理人、そして、挑まれた勝負のメニューは「活火山マーボー豆腐」! 苦戦を強いられるキャロのもとに、謎の忍者料理人味影が現れる……!
 炎の料理人クッキングファイターキャロ 第三章『料理は心』ッ! 振り下ろす包丁にも愛を込めて……。(chopstick?~?)

  ……ってのは間違いなく無いだろうけど。まあ、簡単に予想ができるシロモノではない。「“女子”三日会わざれば、括目して見よ」といった感じに、ワクワクと待つことが正解だろう。

 

 無論、この記事で始めて知った君でも間に合う! なにせ常に全話公開してくれてるんだ。迫力ある戦闘展開、砂糖漬けで甘ったるい百合展開、諸々を含んだビッグウェーブに乗るチャンスは、まだまだ残されている! 

 君が百合を、食事を、魔法少女を求めるなら。きっと「テーブルフロンティア!」は君に応えてくれることだろう!

 

 ……といったところで、そろそろ幕引きの時間。

 最後に作品一話URLを掲載して、この記事はざっくりと終わりとするよ。

www.comico.jp

 カトラリア王国で、君を待つ!