まださなぎ(旧)

誰かさんの蝋の翼。気負わず気楽に書いてくよ。

『神様セカンドライフ』勢いで書いた、昔アオ×キツネ二次創作SS(千文字)

一次創作の二次創作の、三次創作にあたると言えば……わかりにくい。

要するに、一夜のノリと情熱と百合の花の産物。

 

『神様セカンドライフ』はLV3さん(LV3@秋田推し (@osLV3) | Twitter)の作品。

原作サイトは「http://yamanosulv3.blog.fc2.com/」。

 

着想の元は、ゆえふーさん (ゆえふー (@alkalinelily) | Twitter)の絵。下部参照。

ありがたく引用させて頂きました。

 

 

https://pbs.twimg.com/media/CpROo86UsAEeehS.jpg:large

 

 

 キツネのすることは、蒼にはいつもわからない。

 普段は嫌味たっぷりに振る舞って、茶化すようなことしか言わなくて、蒼は嫌われてるのだと思ってた。

 自分が彼女の役割を奪ったから、だから、自分は嫌われているのだと。蒼はそう思ってた。

 御霊分けされて、村の神社にきてから、ずっと。――今、この瞬間が来るまでは。

 

「そんなだから、あんたはバカなのよ」

 

 蒼が意識を外した一瞬に、キツネはすっと距離を詰めていた。

 途端、血のように赤い、紅玉の瞳が、何倍にも大きくなる。実際は、それだけ距離が縮まっただけなのに。蒼にはそうとしか感じられなかった。

 

「なにが……バカなんですか。わたくしは、微力でも皆様のお役に立てるように――ッ!」

 

 反論を口にしようとした時に、キツネはもう一歩。吐息がかかるほどに近く、蒼の瞳を見つめ下ろしてくる。

 揺らぐ風に、キツネが頬に塗る紅の香りが、蒼の鼻腔をくすぐった。

 なぜなのかはわからなかったが、蒼はたまらなく変だと感じて。一歩、下がろうとした。

 しかし、もつれた思考のせいか、足は思うように動かなくて、蒼はふらつくようにたたらを踏んだ。

 

「きゃっ!」

 

 まずい。などと考えた時には、もう遅い。

 蒼は自らが傾ぐ感覚を覚えて、咄嗟に、後ろ手を伸ばそうとした。が、それもできなかった。

 手が後ろに回るよりも、風が間を切るよりも早く。キツネの手が、蒼の手と腰を奪い取っていたからだ。

 

「危ないわよ、生まれたての子馬さん」

 

 ぐっ、と。一瞬にして蒼の態勢を引き戻すと、キツネはニッと笑った。

 嘲るようでいて、安心させるようでもある、変な笑み。

 気付けば紅の匂いは先程よりも濃くなって、目の前にはキツネの顔。紅々とした瞳は、まっすぐに蒼の瞳を見据えて動かない。

 

「なんで……?」

 

「ねえ、『蒼』? アタシは、なんだって出来るのよ。

 あんたを騙すことも、あんたを助けることも――あんたを奪い取ることだって、ね?」

 

 キツネが何を意図しているのかは、欠片ほどもわからなかった。

 でも、その瞳は紅く、赤く。丹の色の輝きで、蒼の瞳を見下ろしている。

 

 手をひねれば、掴まれた手を振り切ることはできそうだった。

 一歩下がれば、離れることもできそうだった。

 なのに。なぜだか、蒼は金縛りにあったように、動く気になれなくて。その紅から、目をそらすことが出来なかった。

 

 キツネのすることは、蒼にはいつもわからない。

 自らが、その瞳に見惚れていることすらも。蒼は気付けていなかったのだから。