まださなぎ(旧)

誰かさんの蝋の翼。気負わず気楽に書いてくよ。

創作者さんへの「無料が正義な時代のマネタイズ」第一回

 

f:id:dettalant:20160924211156p:plain

 

挨拶代わりに、ざっくりと。

みんな、お金が欲しいでしょ!

 

もうちょい正確に言えば、「自分好みの作品を作って、生活できたらサイコー」でしょう?

僕としては、恐らく誰しもそうなんじゃないかと思ってる。

 

ただ、今の時代は「無料が正義の時代」……と、とある人は言っていた。

僕もそうだと思うし、状況は変わり続けている。

 

 

そんな時代を生きるなら、少しでもマーケティング的な考えを持っておくと役立つ。

というわけで、貴方のために情報を用意しました。

 

全部で三回予定の、今回が一回目。

 

基本的には、

価格の心理学 なぜ「カフェ」のコーヒーは高いと思わないのか?

この本を元にして話していきます。

 

良い本だから、興味があれば読んでみてね。

 

(追記:2016/10/05)

第二回書けた。分量多めな理論編。


 

1:なぜ「タダ」は強いのか

 

0円と1円とでは、天と地ほどに違いがある。

タダは何よりも強い。

 

冗談に聞こえるけど、これは本当のこと。

 

例えばポケットティッシュだ。

あれはタダ=無料で配られてるから気軽にもらえるけど、

もし「一つにつき一円で買える」とすると、貴方は買うだろうか?

 

おそらく無料の時と比べると、大きなためらいを心に感じることだろう。

 

なぜか。

お金を支払うことには、「肉体的苦痛」にも似た苦しみを感じるからだ。

しかも人間は、「支払う痛みの方を大きく感じる」癖も持っている。

 

 

たかが一円、されど一円。

一円であっても「これは支払っても良いものか?」という逡巡が生まれるんだよ。

 

この 「逡巡が生まれる」観点から見ると、

実はこれ、百円払うのとも千円払うのとも変わらない

(とも、言えなくもない)

 

 

そこで、タダ=無料だ。

無料の商品の場合、支払う痛みが発生しない

 

よって、「支払っても良いだろうか?」という逡巡が生まれないわけだ。

だからこそ、タダってのは強いのさ。

……ともすれば、有料版を駆逐してしまう程度には。

 

 

実際今こうして僕の文章を読んでるのも、「タダだから」に他ならないでしょ?

「読んだなら一円支払って」 って言っても、貴方は払わないでしょう?

(きっと僕も払わないだろう)

 

この『タダ』って部分は、良くも悪くも強力に作用する。

公開作品の認知度をあげることにせよ、お金儲け計画を邪魔するにせよ、ね。

 

とりあえず「タダ(0円)ほど強力な値段はない」ということ。

ここは大事なことなので覚えておいて欲しい。

 

 

2:君の作品を有料にするとなんか炎上しちゃう理由

 

 非実在創作者マルクくんは、自作の漫画で金儲けを企んでいた。

「ボクの作品は投稿サイトで日間ランク一位、月間ランク十七位を取ったんだ! 思い切って有料化してみて、クリエイターとしてステップアップだ!」

 

 マルクくんの計画は単純であった。

 もし有料化して「95%の人がいなくなる」としても、「5%の人は残る」かもしれない。

 何より自らの作品を支持している人なのだから、有料化してもついてきてくれる可能性はあるはずだ。

 マルクくんはそう信じて、有料化の方策を導入した。

 

 マルクくんの考えたことは、一面的には正しい。

 「一部の顧客相手に絞る商法」も「支持者は支払ってくれやすい」ことも、間違ってはいないことだ。

 

 しかし数日後、マルクくんの作品コメント欄は炎上していた。

 一体どの辺りが、読者の癇に障ったというのだろう?

 

このエピソードは適当にでっちあげたものなので、フレーバーテキスト程度に考えてね。
 

知っての通り有料化した全ての作品が燃えてるわけじゃないが、

無料から有料に転換して不満が噴出した場面」は割りと見たことあるんじゃないかい?

 

 

元々値上げは嫌われるもの。

特に、理由がない(利益釣り上げ目的の)値上げは蛇蝎のごとく嫌われる。

 

この場合は、それに加えてもうひとつ理由が加わるの。

 

 

理由は先ほど言ったことだ。

有料に転換するのは、まさしく「タダ=0円から値上げする」ということになる。

 

無料公開していた作品は、いうなれば「作品を無料提供していた」わけでしょう?

それを無料でなくするのは、「読者から作品を取り上げる」形になってしまう。

 

つまり(無料でなくなることで)先に話した「支払いの痛み」が加わるのだ。

 

 

値上げの痛み + 支払う痛み」のダブルパンチ。

私見だけど、有料化で怒ってる人が腹を立てているのはたぶんこの辺り。

 

この例は「無料公開してた作品を途中から有料展開した」場合によく見られる。

一部サイトの「先読みサービス」とかも、読者には有料展開に見えるから、注意ね。

 

ふたつ目の大事なことは「途中での値段変更は難しい」ということ。

これも、大事。

 

3:ユーザーはきちんと値段を覚えてる

 

これまで説明してきたところは、

「なぜ値上げが嫌われるのか?」ってところを考えると理解しやすい。

 

そもそも、値上げ値下げというのは「以前の値段」あってこそ。

 

貴方が実生活において、牛丼の値下げに目ざとく気付くこと。

また、ガソリン代の高騰にため息を吐くこと。

 

これら全てが「以前の値段を記憶している」からこそ、起こりうることだ。

 

 

例えば貴方が一作品作っていて、それでマネタイズを考えていたとしよう。

 

そして貴方は、安易にこう考える。

「始め無料公開で知名度を上げて、後から有料化すれば儲かるぞ」と。

 

 

この理論は当たっている部分もあるが、致命的な部分を軽視している。

すなわち、「読者は過去の値段を記憶している」ということ。

 

無料で公開していた作品の場合、

(作者としてはどうであれ)読者は「この作品は0円の価値だ」と考える。

 

その認識は、強固な認識だ。

 

 

一時期、ハンバーガーが一個60円だったことがあった。

その時期を満喫した人の中には、今でも「ハンバーガー = 60円の価値」な人がいる。

 

それとおおむね同じように、

値段降下に比例して、ユーザー内での価値は下がる」のであり、

一度下がった価値を向上させるのは困難」だ。

 

 

この辺りの詳しいところは、第二回に譲るとして。

ここでは「過度な安売りは、それ自体の価値を低減させる」ことだけ覚えておいて欲しい。

 

 

で、だ。

ここまで読んできた貴方が気にしているのは、

「じゃあどうすればいいのか?」ということだろう。

 

一度下がった価値を向上させることは、たしかに困難だ。

しかし、それは(読者・ユーザーにとって)「既知の商品」においての話。

 

真逆の「未知の商品」――要するに、「これまでとは違う新作」においては、

既存の価値基準を適用しにくい」のだ。

 

 

例えば……少年ジャンプが値上げすると、読者はめざとく気付くだろう。

長年の歴史と、ユーザーに染み付いたイメージがあるからだ。

 

しかし、集英社が「新しい少年マンガ雑誌」を創刊した時は話が別だ。

ユーザーの誰もが「確固たる値段基準」を知らない。

だからこそ、実質的に値上げが行われていても気づかない

 

企業が新しいことする時に、別ブランド作るのはこういうカラクリ。

結構多くの場面で見かけるはずだ。

 

 

特にエンタメコンテンツというのは、そういう「比較が難しい」特徴を持ってるからね。

新しい区切りを用意することができれば、ユーザーに受け入れてもらいやすい。

 

だからこそ、

新作・新シリーズなど、新しい区切りから値段変更がオススメ」なのだ。
 

なので、新しいことをする時・大きく値上げするときは、

ブランドを変える」ことを意識するとよろし、ということ。

 

Ending:まとめとcredit

 

  • タダ(0円)ほど強力な値段はない
  • 途中での値段変更は難しい
  • 過度な安売りは作品の価値を低減させる
  • 値段変更には、ブランドを変えるべし

 

重要点を抜き出すと、だいたいこんな感じ。

 

この第一回、基礎的な部分が中心になったけど、どうだったかなあ?

 

今の所は、第二回が「有料販売時の値段付け」、

第三回は「個別事例もろもろ」……を予定してるけど、予定は未定。

 

気になることがあったら僕の[Twitter]辺りで聞いてくれれば、

なんか考えてみます。

僕、実際そこまでマーケ詳しくないって事実だけは勘弁してね。

 

ではでは、じゃねーっ!

 

以下credit

 

この記事を書こうと考えた発奮元ページ

各種収益サービスとうちのスタンス。 - ヤマノス

(ちなみに、「無料が正義な時代」の発言元もこの人)

 

冒頭でも書いたけれど、参考書籍はこれ。

価格の心理学 なぜ「カフェ」のコーヒーは高いと思わないのか?

良い本なので興味が(以下略)

 

画像は、いつもお世話になっているウィキコモンズ先生からお借りしたよ。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Draw_Bag_Money.png

(この画像、風刺画っぽくてかなり好き)