有料化の際の販売モデルと読者心理について。「Money/04」補足記事
※注意
この記事は「Money/04」記事の補足になるよ。
主記事は後日公開予定。気になる人は待っててね!
主記事から引き継がれる前提は三つくらい。
- 三種類の商品バリエーションを販売する
- 電子書籍を商品の軸にする
- 物理特典として、缶バッチを付けあわせる計画
で、主にこの辺りの話。
- 堅実な商売モデル
- DRMはめんどっちい
- グッズ商法はいいぞ
- ファンに見られる集団心理
全体に個人的意見しかないので、その点は加味して読んでね。
1:考えるべき問題点
作品を作る誰しもが直面することだけれど。
特に商売を行う上では「集客・宣伝の問題」が立ちはだかる。
解決するために、多くの店舗が行っている手段はこれら3つだ。
僕が今回仮案に含めたのは3つ目の手法。
なんでかっていうと、3つの理由があるから。
- 広告を打つには、「かけた広告費を上回る売上」が必要になること
- 大型店舗に出店するには、諸問題が発生すること
- 創作者で多く見られる気持ちから、「作るためのコスト」は度外視できること
一番始めは言わずもがなだろうから、2つ目からざっくり解説していこう。
1.1:大型店舗の場貸しを利用するデメリット
はっきり言って「ショバ代」の部分が大きい。
もっと大きいのは「同じ考えの出店者と競合関係に陥る」こと。
ショバ代 = 手数料を取られる上だと、
当然ながら「売上 - 手数料」が得られる収益になる。
これは当然痛い。が、これ単体だとそこまででもない。
むしろ怖いのは「どう動くかわからない競合者」の部分だ。
例えば、こういうエピソードを見てみよう。
貴方は一冊300円で本を販売した。
手数料はサイトごとに違うが、ここはわかりやすく「50%」としよう。
そうすると、
一冊売れて貴方に入る儲けは「150円 - (振り込み+決済手数料)」だ。
これも(多く売れないなら)儲かるとは言いがたいが……。
そしてある日、貴方は一つの競合商品を目にする。
(貴方と同じ程度の絵・ストーリー・特典がついているとして)
その価格なんと「99円」! 素晴らしい価格だ。
「似たような商品がはるかに安い場合、そちらを選択する」ことは、
ユーザーが持つ当然の心理だ。
おそらく貴方の商品は、これまでより客を奪われるだろう。
ただ、この値段だと一冊売れるごとの利益が減る。
ざっくり「99 - 50% = 50円」が入る計算だが……。
同じ売上に達するには、当然三倍の売上が必要になる。
貴方は、価格を下げて競争するべきか?
それとも、価格を下げないべきか? これは悩ましい問題だ。
こういった話、特にamazon先生では頻発している。
amazon先生はロイヤリティが高め(マルチ配信だと65%)なので、
99円商法も理にかなっている部分もあるのだが。
他のサイトでの販売を考えると、少し厳しい部分もある。
「軸足をどこに置くか」は非常に大きな部分の一つだ。
まー実際のところ、
「電子書籍の商品Aだけは大手サイトに置く、他商品は自サイト」
あたりが定番なんだけどね!
1.2:「作るコスト」の話
先ほど「作るためのコストは度外視できる」と話した。
(考えるのが面倒くさいが)
ここは必要な話だ。
是非、自分の場合を考えながら読んで欲しい。
そもそも、(主記事でさんざん進める予定の)
「製造コスト = 配信費用 + 特典製造コスト + 製本コスト」みたいな考え方。
これは厳密な商売としては間違っている。
なぜか。
「作品作成にかけた労力&時間 = 人件費コスト」を考慮してないからだ。
ここで想定しているのは、
「趣味で作成した作品を若干収益化する」程度。
なので、意図的に除外した。
(本格的にお金儲けするときは考えるべきだよ)
で、だ。
ここまで話した内容だけど、
僕は「成功すればベスト、小さな赤字で済めばベター」だと考えてる。
口をすっぱくして完全受注完全受注言ってるのも、そういう理由。
えいやと博打を始めるなら、「負けても痛くない博打」が一番良い。
正確に言えば「負けないシステムを構成した上での博打」。
そういう意味合いを含めて「まず既存ファンを満足させよう」って話なの。
2:販売方法についての提言
ここ、特に個人的意見が大いに含まれてるよ。
参考意見程度に読んでね。
結論から言えば、「DRMフリー形式で販売」が良い。
そして、「そこも付加価値とアピールするべき」だってこと。
ひとえに電子書籍だといっても、
amazon先生を筆頭とした電子書籍ストアにはいくつか問題点がある。
一つはロイヤリティの問題だ。
amazon先生が顕著だが、販売価格の65%が差っ引かれる。(kindle独占販売では別)
他のストアは各所異なるが、ショバ代は当然のもの。
それが電子書籍ストアの定めだ。
二つ目はDRMの問題。
海賊版は恐ろしいことだが、DRMはたいがいの面で不便になる。
それに、一般的DRMはいとも簡単に解除できてしまう。
(疑うようならgoogle先生の「DRM 解除」サジェストでも見ると良い)
苦労と不便を受けるのは、善良な一般ユーザー。
だというのに海賊版は防げない。正直、これほどくそったれなことはない。
三つ目が特典発送の問題。
物理特典を含む特典βの話ね。
一旦「電子書籍ストアで販売」してから、
「別で聞いた、相手宅住所に特典を発送」なんて現実的じゃない。
しかし、物理特典なしでは値段のかさ増しが難しい。
利益率を上げるなら、バンドリングを用いたいところだ。
あと、「DRMフリー」とするならしっかりその事実を主張しようね。
DRM事情を知ってる人には、わりと付加価値になりうるよ。
そこら辺を含めて、僕の考え。
- 正規ユーザーだけが損するシステムは、控えめに言ってもSH*T
- まずはロイヤリティフリーの「BOOTH」や「BASE」からがいいかも
- DRMフリーにして、高らかに「ユーザーの利便性」をアピールすべし
- ついでに缶バッチを一個200円あたりで販売。お得感を煽ろう
繰り返すけど「大手電子書籍サイトでも並行販売」して、
「自サイト物販ならDRMフリー+追加特典」をアピールしておくと良いよ。
利便性なら電子書籍サイト、
付加価値なら自サイト物販。
でも、「どちらで買っても同じ程度の価値を得られる」としておくこと。
(いくら利益率が高いとしても)
「あまりにも強い優遇はユーザーの困惑を招く」からね。
3:グッズ販売への誘い
「同時に缶バッチ一個200円で販売」
これも一種のアンカリング。
単体缶バッチが同じサイトに並んでいると、
つい「特典缶バッチの価値 = 単体缶バッチの値段」と思ってしまう。
外注する製造原価は「一個辺り50円」なのに。
さも当然のように値付けされていると、
ユーザーは「わかんないけど、200円に近い価値?」と判断しやすくなる。
……製造原価、50円なのに。(二回目)
これは値段付けから価値を操作するテクニックの応用になる。
前に書いた第二回……でもあんまり説明してないね。
主記事の次は「グッズ販売」の記事を書く予定なので、そこで説明するよ。
というか、今そう決めた。
4:電子書籍化『されてしまった』読者さんの心情
最後はすこし方向を変えて、読者さんについての話。
リクエストとして頂いた部分なので、少し詳細に書くよ。
第一回で説明したけど、
「無料からの有料化 = 読者から作品を取り上げること」でもある。
世の創作者の人達は、
「ファンに不満を抱かれないだろうか」と不安に思っていることだろう。
だからこそ、はっきりと言っておきたい。
「不満を抱かれるか否かは、貴方の取る施策による」とね。
具体的に言うと、こういう感じ。
- 「これまで読者が享受していた部分」から削る = 不満発生(大)
- 「これまで読者が享受していた部分」を変えない = 不満発生(小)
も一つ言うと、これもだね。
- 「お金払わないと見れない追加要素」が多すぎる = 不満発生(小)
- 「お金払わないと見れない追加要素」が少なめ = 不満発生(微)
- 見るからに利益第一のしょっぱい特典 = 不満発生(特大)
- わりと豪華(に見える)特典 = 不満発生(微)
えっと……うん。
どのみち不満というのは発生する。
それは有料化の運命だし、ぶっちゃけ有料化しなくたって発生する。
だけど、それは有料化の一面にすぎない。
こういった側面もあるからだ。
- ファンに対して良心的な有料化方法 = 民忠上昇(小)
- 払ったお金に見合った満足度提供 = 民忠上昇(小)
- 払ったお金を上回る満足度提供 = 民忠上昇(中)
「民忠」って言葉を使ったのは、単純にうまく略せる言葉がないから。
もっと長い言葉で言うなら、
「ファンコミュニティにおける作品・作家への好意的な感情。またそれを抱くファンの割合」
を擬似的に表す言葉かなあ。長いので、やっぱり民忠と呼ぶよ。
ここでの『不満』も、
「ファンコミュニティ(中略)の反感の感情。またそれを抱くファンの割合」
といった感じに考えて欲しい。
僕の私見になるけれど、ファンコミュニティには面白い心理が働いている。
「『民忠 - 不満』において『民忠が上回る』場合」は、
コミュニティは叩き意見を集団で排除する方向に動く。
しかし『民忠 - 不満』で不満が上回った瞬間。それは真逆に動く。
「この作品はすべからく叩くべきである」な空気に書き換わって……ね?
その後どんな事が起きるかは、すでにお知りのところだろう。
集団心理はまこと恐ろしいものである。
それで、有料化したい人が行える選択肢はこれだ。
- 読者の既得権益を取り上げない = 付加価値を付ける方向性
- 「この値段なら妥当だ」と思わせる価値を演出する
- 「販売で得た利益」を還元する無料アップデート
もしくは「買いもしない貧乏人など無視する」って手もあるけど……。
(見も蓋もないけど、一応有効な手なのよ)
結論としては、
「すでに公開した分を削除しないなら、おおむね納得してくれるはず」ってこと。
安心してね!
ending:恒例のクレジット
先にこっちができちゃったから、こっち公開したんだけど。
うまく話が繋げられるといいなあ……。
いつもの参考書籍
「価格の心理学 なぜ「カフェ」のコーヒーは高いと思わないのか?」
主記事も含めて、大いに参考にしました。
サムネ画像も、やっぱりウィキコモンズ先生から。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Draw_Bag_Money.png
シリーズ『無料が正義な時代のマネタイズ』
第一回/「無料からの値段変更は怖い」
第二回/「値段付けに役立つ理論」
第三回/「広告収益狙いのもろもろ」