他人との会話を楽しめない・うまくできない人のための、六つのコミュニケーションTips
会話は楽しいものだ。知らないことを知れるし、知ってることを再発見できる。同意して同調できるし、指摘して承認させられる。しかし、正しい楽しみ方を知らず、戸惑いに沈む人のなんと多いことか。
他人がわからなかった昔の僕みたいな人のために、僕は今持っている認識を書き記すことにする。主に利己的で合理的な人向けの書き方だから、利己的な気持ちで読んでいってね。
(本編とは関係ない、拾い物アイキャッチ画像)
はじめに
まず前提として、どうして「他人と会話を楽しめない」のかをさっくりと示そう。
単純に言ってしまえばその理由は三つ。
「楽しみ方を知らない」「うまくできない」「そもそも会話を必要としていない」のどれかに分けられるだろう。
この最後の「そもそも会話を必要としていない」人の場合は、別に会話しなくて良いと思ってる。美味しくもない食事を食べるのは苦痛なのと同じように、話したくないのに話すことは苦痛だ。
なにより「会話しなくても問題なくて、孤独が心地よい」ことは最高のスキルだ。誇らしさを胸に抱いて、力強く歩んでいって欲しい。
この記事において問題となるのは、前者二つだ。
「楽しみ方を知らない」人は、言い換えると「誰かと会話したいとは思っているけど、どうすればいいかわからない」タイプの人。
「うまくできない」人は、同じく言い換えると「実際に誰かとの会話を楽しんでるけど、どことなく満足しきれない」タイプの人のことだ。
そんな人たちにとって、少しでも役立つ話ができればいいと僕は思ってる。
というわけで、目次。それぞれの人向けに三つづつ用意した。
「楽しみ方を知らない」人のための三つの情報
一、「まず自分のタイプを分析しよう」
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」とは孫子の兵法書のとても有名な言葉だけれども、自分のことをしっかりと知ることは、相手を知ることと同じだけ重要なことだ。
しかし、傍目の限りでは、自分をしっかりと内省している人はそんなに多くない。だからこそ、まずは少し問いかけをさせて欲しい。
- 君は「自分の好きなこと」を聞かれて、はっきりと言葉にできる?
-
君は「自分の嫌いなこと」を聞かれて、はっきりと言葉にできる?
-
君は「自分がどういう性格か」と聞かれて、はっきりと言葉にできる?
もし即答できるのならば、もう少し続けて考えてみてほしい。
- 君の「自分の好きなこと」について、「好きな理由」もはっきりと言葉にできる?
- 君の「自分の嫌いなこと」について、「嫌いな理由」もはっきりと言葉にできる?
- 君の「自分の性格」が、どういう風に形成されたか、ある程度は言葉にできる?
ここまで即答できたのならば、君は「しっかりと自分を理解できている」人だ。ちょっと誇っていいと思う。
上手く答えが出せなかったり、上手く言葉にできなくても大丈夫。むしろ「わからない問題が見つかった」ことを楽しんで、いつか答えを出せるようにしよう。
どんな人にだって、人生ってやつには余裕が残されている。たとえ余命が一日の人であったって、自分を振り返るには十分すぎる余裕だ。
自分が何を好んで、何を嫌って、何をしたくて、何をしたくなくて、何を求めて会話したいのか。
ぼんやりとした意識では会話を楽しめないのなら、きっと君には、それが必要なんだと思う。
一、「他者の裏事情に興味を持ってみよう」
あまりと言われないことだけど、人間は「発言の内容」と同じくらい、むしろそれ以上に、「だれが」「どういう理由で」「どういう人へと」言ったのかという、周辺情報の部分を重要視する。そして時には、周辺情報で意味が逆転してしまうこともある。
例えば、高潔な人権活動家が弾圧に対して「全ての人間には、自らの自由を謳歌する権利がある! なぜ偏った考えをもって、人々の趣味嗜好と自由が踏みにじられなければならないのだ!」と言ったとしよう。まあ、良い言葉に聞こえるんじゃないかな。
だけど、別の人が同じ内容を言ったらどうなるだろう?
例えば、女性・男性問わず下着を集めに集めて逮捕された(ある意味では)高名な人が、先ほどの人と同じく「全ての人間には、自らの自由を――(以下略)」と言ったとしよう。どう聞こえるだろうか……なんて改めて聞かずともわかるよね。
こういう風に、他人の発言を正しく理解するにおいては、その内容と同じだけ周辺情報が大切になってくる。いわゆる「文脈を読む」ってこと。
だからこそ、誰かの話を楽しむ上では「その相手を取り巻く事情を知ろうとする」ことがすごく大事。
要するに、さっき聞いた自分への問いかけと同じだ。直接好みとかを聞かなくても、「どういう話題を多く話して」「どういう話題だと嬉しそうになって」「どういう話題では沈黙する」のかを観察していくと、徐々にわかってくるはずだ。
自分の口を開いて話すだけが会話じゃない。誰かと誰かが話しているところを盗み聞きする――あまり褒められたことじゃないかもしれないけど――ことは、すごく楽しい。
かの人間観察大王、シャーロック・ホームズ先生になった気持ちで周囲の会話を盗み聞きしよう。……怒られたり警察呼ばれたりしない範囲でね。
「この人はこういうタイプの人なんだな……?」と理解できるようになったら、次の部分が役立つと思う。
一、「新たな情報を引き出すための会話」
僕の私見だけど、「会話する」ことの動機は大きく分けて二つだと思う。
一つは「相手と共感しあう」こと。自分の話した内容に相手が同意して、相手が話した内容に自分も同意して、ある種の一体感を手にする目的。「承認欲求を満たす」とかって小難しいワードもこっちに含まれる。
もう一つは「好奇心を満たす」こと。知らないことを知って、様々な事を新しくすることは、人間がすごく好むことだ。本を読むのも、知らないお店に入るのも、そして――他人と会話するのも。好奇心を満たすための行いでもあるってこと。
後者の「好奇心を満たす」を実現させるためには、意外と会話はバカにならない。だって、盗み聞きでも、推察でもよくわからないことを知るためには、直接問いかけるのが一番なんだから。
そして、それを引き出す言葉はすごくシンプルだ。
「◯◯(知りたいこと)について、詳しく聞かせて欲しい」と問いかけるだけでいい。
そんなので大丈夫なのか、と思う諸兄もいるだろう。だけど、多くの人は話好き……というより「自分のことを教えたい」という欲求を持ってるから、意外とどんどん教えてもらえるよ。
そうして語ってもらえた内容のなかで、また気になる部分があったら「◯◯(気になった部分)ってのはどういうこと?」と聞けばいいし、少し毛色の違う部分が聞きたいなら「その時、どういう事を考えてたの?」でも「今度は◯◯(違う話題)について聞かせてもらってもいい?」なんて言えばいい。
あらかた情報を引き出し終えたら、「新情報を語ってもらえたこと」について感謝を述べよう。「答えてくれてありがとう。参考になった」とでも言ってその場を離れれば、君のコミュニケーション作戦は大成功に終わる。
こうした質問をする上で重要なことは三つ。
- 先に、何を聞きたいかはっきり決めておく
- 途中で気になったことは、恐れずどんどん質問する
- 「教えてもらっている」という敬意の心を忘れない
これさえできたなら、君はきっと質問マスターになれる。そして、「好奇心を満たしたい」という方向性で、他者との会話を楽しめるようになるはずだ。
面白い本を読むのと、同じくらいの知的好奇心を満たすことが出来るもの。会話はそういう意味でも楽しめるんだよ。
(二回使われると意味深に見えてくるだろう?)
「うまくできない」人のための三つの情報
「楽しみ方がわからない」人のための情報が基礎編なら、きっとここからは応用編。
先んじて話してきた重要点は、以下の四つ。
- 自分を知る
- 他人を知る
- 好奇心を満たす
- 質問する
この四つはこの後でも重要になるから、覚えておいてね。
そして、ここから先は主に「会話を成功に終える」ための方法論になっていくよ。基本的には、失敗するよりは成功した方が嬉しいよね。
一、「理想の会話は持ち寄り寄せ鍋」
ここで言う理想の会話ってのは、主に「自分にとっても、相手にとっても、ベストでハッピー」ってこと。
ちなみに「良い会話」は「自分にとってハッピー、相手にとってはまあまあ」。
「悪い会話」は「自分にとってバッド、相手にとって超バッド。骨折り損のくたびれ儲け」だよ。
「理想の会話」を目指すことは、「悪い会話」を避けるためにもなる。というわけで、僕なりの理想の会話の(一パターン)を示そう。
- 自分・相手が、両方共に得るものがある
- 自分・相手が、両方共に意見を主張する(詳細後述)
- 自分が聞きたかった部分を引き出すことができた
- 後に残る禍根がない
- その日寝るまで幸福な気分でいられる(ここ重要!)
といった辺りかな。
意見を主張するって部分は、「50:50」でも「30:70」でも、最悪「10:90」でもいいんだよ。基本的に人は「自分の意見を伝えたい」って欲求があるから、「どんどん聞かせて」と言い続ければ時間が許す限り語ってくれる。
だけど、ずっと話してばかりだと「ほんとに理解されてるのかな……?」と怪訝に思われてしまう。だからこそ、ほんのちょっとでも自分の意見を話して「しっかり理解してるよ。だからもっと話して」とアピールしたほうがスムーズになる。
逆に、相手が「聞かせて聞かせて」って態度でもないのに、自分の意見を述べ続けるのはあまり良くない。なぜかというと「承認欲求を満たす点でも不十分で、好奇心を満たす分では論外」となってしまうから。
合理的で効率的な視点を取れば、「適度に相手の話を引き出す」ことはすごく大事なの。
基本は相手の人から話を聞き出して、自分は時折ちょびっと意見を述べる。それくらいのバランスで行けば、会話という天秤は綺麗につり合って進むはず。
頑張って、新たなる旅人さん。
一、「突然話を振られたら」
ここまでは主に「自分から話しかけにいく」場面を想定して話してたけど、実践の場に移すとそうじゃないことは多い。そも、話好きの人は(非常にありがたいことに)向こうから話しかけてくれることが殆どだ。
だからこそ、そういう場合にどう対処すればいいのかを知っておく必要がある。
なんてったって、話好きの人の好感度をあげると、様々な場面でフォロー(支援砲撃)してくれて助かるからね。(とっても卑怯な利己的理由)
……真面目な理由を述べると、そういう人は質問に答えてもらいやすい。人脈にもなってくれたりするので、本当に真摯に答えることを推奨する。
突然話を振られる場合でも、概ねパターンはある。基本的に、関連の無い話題を前置きなく振る人は、ぶっちゃけエキセントリックな部類の人なので、あまり想定せずとも大丈夫だ。(そういう人には思ったことをそのまま素直に述べると良い)
常識的部類の人が振ってくる会話を分けるなら、こんな感じだろうか。
- 世間話(天気の話が多い)
- 自分(話しかけられる君)が知ってる話
- 自分が知らない話
- (主にその時の話題において)相手からの問いかけ
- なんだかよくわからない話
一つ一つ対策を示していこう。
まず世間話は「そうですね、(相手が言った内容)ですねえ」でオーケーだ。
基本的にこの手の話は「会話のきっかけ」「単に思っただけ」「同意を求めて」といった理由が多いだろうから、オウム返し的にすればベターとなるだろう。
ついでに言うなら、聞きたいことが思いついたらその時に「話は変わるんですけど、◯◯について聞かせてもらってもいいですか?」と付け加えてもいい。突然聞いてみるよりかは、大いに回答率が上がるであろう。
次は少し飛んで、「なんだかよくわからない話」について。
この手の話の場合、「相手としても悩んでる話」である場合と「禅問答チックないじわる話」であることが考えられうる。
その話の方向性にもよるが、「よくわからない話で、正直わかんないです」と素直な気持ちを示しておけばオーケーだろう。その時思ったことを付け加えれば、なおベターだ。
そんなよくわからない話の場合は、相手としても「答えてもらえなくても大丈夫」と思ってることがほとんどであろう。素直に答える以上のことは難しい。
次に「自分が知らない話」について。
ここは少し難しい場面だ。方法としては「(自分なりに考えるだけ考えて)なんとか答えてみる」「素直に知らない・わからないと伝える」の二つあたりだろう。
まず推奨するのは「素直に知らない」と伝えることだ。知ったかぶりをしても痛い目にあうばかりで、良いことは少ない。
もし知ったかぶりするのでも、「素直に知らないと伝えてから、自分なりにどう考えたか伝える」が断然良い。真摯な対応は常にベストにはならずとも、バッドを回避しやすい。
次に「自分が知ってる話」について。
一見簡単そうに思えるが、実はベスト・ベター・バッドの分岐が複雑で難しいポイントだ。 なぜかというと、「自分が知ってる情報を伝える」ことが、必ずしもベストとは限らないからだ。
時には「わざと知らないふりをして聞き返す」が良いかもしれないが……まあ、そんな高等テクは会話のプロに任せておこう。嘘は慣れるまで封印したほうが良い。
僕的にこういう場面で重要になると考えているのは、「要約したジャブを先行させる」こと。
始めは簡単に話して、相手が興味を持たなかったらそれでおしまい。もし相手が興味を持って聞き返してきたら、徐々に情報開示する。
要するに(言い方は少し悪いが)「ふるいにかける」ということだ。もしその人が「何でもかんでも聞き出そうとする好奇心の塊」であったなら、始めから全力で話せばいいかもしれない。しかし、多くの人はそうではない。
そのため、「先行した要約情報で反応を伺い」「興味を持って聞き返されたら、詳しめな情報で準備と整えて」「さらに聞き返されたら、持つ情報の全てを伝えようと試みる」と段階を踏んだほうが断然ベター……ではないかと思う。
最後に、「相手からの問いかけ」について。これが一番難しい。
まず「突然問いかけられると、答えを準備する時間が取れない」ことが一つ。「どういう答えが良いか判断する基準が少なくなる」ことが一つ。「返答の組み立てが難しい」ことが一つで、合計三つの難しいポイントがある。
それらを解決するための方法は、「基本の返答方式を決めておく」ことにある。
例文として……そうだな。
「そういえばこの前◯◯って話してたけど、あれからどうなったの? うまく行った?」と聞かれることにしよう。過去の話を思い出して、今現在と結びつける必要がある。
こういう場合に、「基本の返答方式」は役に立つ。
ええっと、僕が答えるなら……「はい、うまく行きました。あの時◯◯と話した後、▽▽ということがあったんですけど。おかげさまで、なんとか切り抜けられたようです」…こうかな。
この返答は大きく分けて三つの部分に分けられる。
一つ目は「はい、うまく行きました」の部分。これは「YES・NO」だ。わかりやすい返答を目指すなら、まず始めに「YES・NO」を示すと良い。
二つ目は「あの時◯◯と――▽▽ということがあった――」の部分。ここは「過去の確認・追認」と「時系列の補足」を含んでいる。時系列を遡る過去の話の場合は、「以前の確認→新たな事象」とすれば伝わりやすくなる。
三つ目は「おかげさまで、なんとか切り抜けられた――」の部分。ここは「全体の意味・結論」を示す。合理的に考えると一つ目の部分を反復してるだけで、別に無くてもいい。しかし、これがあるのとないのとでは、大きく言葉のまとまりが変わる。
「YES・NO」「(質問によって変動)」「結論」は鉄板の流れだ。
始めに明確な「肯定・否定」をつけて、終わりに一文の結論をつける。これさえ癖付ければ、どんな質問にだってスムーズな回答が導き出せるはず。
一、「予想はしておくべきだが、予定付けてはダメ」
まず、はっきりと言っておこう。「相手の反応を読みきることは不可能ではない」が、「それをしてしまうと会話の楽しさが霧散する」と。
例えるなら、将棋だ。一度解き終わった詰将棋を、全く同じように繰り返し繰り返し繰り返すことを楽しめる人は、そう多くはないだろう。少なくとも僕はまっぴらゴメンだ。
伝わりやすくするために、僕の話を少ししよう。僕は(よく知ってる身内に限られるが)一応ながら、「相手の反応を完全に予想して、実際に話してもその通りになる」経験がわりとある。
話す相手のブラックボックス部分が少なく、性格を知っていれば知っているほど、話題と相手の反応を意のままに操れる可能性が上がっていく。シミュレートをしっかりと行えば、頭の中の反響板が十分な働きをするからだ。
……が。これは楽しくない。どんなに便利で都合が良くても、気が狂いそうなほど退屈極まりない。得るものといえば、頭の疲ればかりだ。
会話をスムーズに回すために、ある程度の予想は行うべきだと思う。しかし、正直なところ予想ができるようになったなら、「予想せずに話す」テクニックも覚えるべきだ。
相手の反応を半分予想して、半分は空白としたまま会話を進める。これこそが会話にスパイシーな楽しみを出させる一番のテクニックだし、会話を弾ませるテクニックでもある。
質問をするときは、「返答してもらえそう」とだけ予想できたら良い。返答するときは、「半分は答えられてるだろう」とだけ予想できたら良い。……まあ、僕もついついバランス崩しちゃうけどさ。
これは逆に、「予想とはまるきり違うことを答えられて戸惑う」ことを避けるためのテクニックとしても有用だ。
麻ひもをどれだけ引っ張ってもさして伸びず、ゴムひもは軽い力で伸び縮みするように。「思考のゆとり」を始めから設定しておくことで、柔軟性が増す。
なんにしても良い部分の方が多いので、「私は人を意のままに操りたいんだぜ!」という人以外は、半分予想して半分空白とすることがオススメ。
まとめ
誰かと話すことを楽しめるか否かは、人によって大きく異なる。水を泳ぐ魚のように、当然のことだと謳歌して見える人がいれば、コウモリにとっての太陽のように忌避する人もいる。
僕もおそらく、後者に分類される方だから、避けたくなる気持ちはわかる。だけど、今の僕は少し知っている。会話はしっかりとした方法論の上で読み解けば、興味深い学術書ほどに重要な情報を引き出せるものなのだと。
だからこそ、会話の苦しみを少しでも軽減して、楽しみを選別・享受するための方法を、突発的に湧き上がる情熱だけでまとめた。
この文章が、どこかでコミュニケーションに悩める、僕の知らない誰かの足場となりますように。僕と、かつての僕のような人に、良き巡りが訪れますように。
時計に表示された「4:44:44」に苦笑を覚えながら。 リラ/dettalant