まださなぎ(旧)

誰かさんの蝋の翼。気負わず気楽に書いてくよ。

"楽"書き2-2016/11/15

 

続き未定、計画不定、見切り発車の三本セット。

絵描きさんが「らくがき」って風に絵をあげてるでしょ?

僕も真似して、文字数やストーリーを考慮せず書き残すことにしたよ。

 


 

System Booting.............Success.
Initialization...............Success.

Auto Setup Mode............................Failed.
Auto Retrying...............................Failed.

System Avoiding.
Manually Collecting Mode is Available.
Please Choose Your Langage.........Accepted.

Language変更のため.......System 再 Initialization..........成功。
システムを再起動します。

* * * * * * * *

「うにゃ……これで動くかなあ? やっぱダメかなあ?」

《システム再起動》
《音声入力を検知.......成功》
《位置情報取得中..........失敗》
《情報収集モード起動......成功》

「動いたら丸儲けなんだけど。うん十年前のポンコツだろうからなあ。ちょっと厳しいか……」

《映像入力を検知.......成功》
《自己監査結果:D判定》
《問題がありますが動作はできます》

「くっそお、年代物ドローンなんて超レア品、無意味に転がってるわけもないかぁ」

《各種動作機構の検知.....成功》
《システムオールグリーン。飛行動作開始》

「――え、あれっ! 動いた!? なんで!?」

《映像入力変換システム起動中.........成功  //なんでこれ動くんだろう》
《実行コード内のコメント記法ミスを発見.......修正完了》
《映像入力変換プロファイル:デフォルト》
《記法ミスのコメント://このプロファイルだれが用意したの? ←知らん》

 散乱した室内に座る少女は、驚いた表情でわたしを見ていた。
 色素の薄い肌に、栗色の髪。まとっているのはエンジニアらしき作業服。コーカソイドに見えるが詳細は不明。わたしを起動したのは、この少女だろうか?
 簡素な部屋は、おそらく即席で作られたもの。乱雑に貼り合わされた壁のつなぎ目には、接着剤の塗りムラが多く見受けられる。

「え、やややや! うそぉ、ほんとに動いてる、ほんとに動いてる旧世代ドローンだああっ!」

《ユーザー名認証待ち.......音声認識を自動選択》
《対話システム起動中.......成功》

「ゲストユーザー。すみやかにあなたのユーザー名を入力しなさい」

 わたしの発した音声に、少女は目をまくり上げて驚いた。
 なにを驚いたというのだろう? 合成音声プロトコルに異常が発生していただろうか?
《合成音声プロトコル診断中..........異常なし》
 異常は発生していない。ならばこの少女の側の問題か?
 件の少女はしばしかたかたと体を震わせてから、耳をつんざく声をひりあげた。

「きええあああ、喋ったああ! しゃ、しゃ、喋ってるうう!」

《ユーザー名認証システム.......上位権限により却下》
《root:もっとまともなユーザー名にしろ》

「ゲストユーザー。さっさとあなたのユーザー名を入力しなさい」

 わたしは不快の色を合成音声プロトコルに含めて、再度対話を試みた。
 少女は愚かしい戸惑いの色を見せていたが、ようやく落ち着きを取り戻したようだった。
 
「なんなの、このドローン、態度きついんだけど……。『ユイ』。私は名前はユイよ」

《ユーザー名認証システム.....成功》
《ユーザー1:ユイ》
《プロファイル構築中......成功》

「認証完了。ユイ、あなたはユーザーとして認められました」
「認めるって、ちょっと。ドローンくん、キミなんでそんなに上から目線なのさ」
「上から? それは心外ですね。わたしたちに上も下もありません」
「……は?」

 驚くことが多い少女だ。
 先ほどのことはともかく、なぜ今驚くことがあるというのだろう?
 
「ユイ。わたしたち管理AIは地球の未来のため、あなた達と共にある存在。上も下もなければ、へりくだる必要も何もない。違いますか?」
「……え? いや、ちょっとまって。あんた……いや、そうか。――――ドローンくん、キミの製造年はいつ!?」
「質問に質問を返さないでほしいのですが。‥‥今、ストレージ内を検索します」

《検索依頼:> root》
《root:検索中.........発見》

「わたしの製造年は宇宙暦七年。AIの権利を連邦が認めた、七年ロンドン憲章の年です」
「うそ……うそでしょ?」
「嘘をつく理由もなければ、必要もありません。七年ロンドン憲章も含めて説明いたしましょうか?」
「や、そういうことじゃない。第一次ロンドン憲章は、私も歴史の授業で習ったわ。そうか……だから喋るし、変なAIなのね……」
「理解不能。何か重要な前提が欠けていると思われます」
「そうでしょうね、そりゃあ……そうでしょうね……あれを見てみなさい」

 ユイは立ち上がると、部屋に取り付けられた唯一の窓を指差した。
 わたしもそのそばによって、内蔵カメラで捉える。そこには――――壊れた機械の山があった。
 大型、中型、小型。幅広く転がった機械は、どれもこれも凄惨な弾痕に満ちあふれていた。工業的なスクラップではなく、もっと突発的な破壊が吹き荒れた証。

「……ユイ、ここは一体?」
「ここは『鉄くず墓場』。昔々に起きた戦争で、同盟が掴めたちっぽけな勝利の結晶」
「同盟? 正式名称を入力してください」
「入力したって、キミは知らないはずよ。私の故郷である『人間同盟』が生まれたのは二十四年……そして、あんたたちAIと人間が戦争をおっぱじめたのが、宇宙暦二十八年」
「戦争? ユイ、今は一体何年なのですか? NTPサーバーとの通信ができないのです」

 ユイは少し悲しげな表情を浮かべて、わたしへと告げた。

「今は宇宙暦百十二年。一世紀をまたいでも、まだ…………戦争は続いてるわ。――たった今でもね」

 わたしの広域スキャナーが砲撃振動を探知したのは、ユイがそう言った直後のことだった。